怪我の予防にも繋がる!!身体の「可動性」を高める方法とストレッチの種類!
これまでの記事で身体の構造や身体を効率よく動かすために必要な考え方についてお話しさせていただきました。
トレーニングや日常生活に知って役立つ!身体や動きの構造について
今回はその中でも優先してアプローチすべき「可動性」についてお話ししていきたいと思います。
可動性とは「関節を可能な限り動かす能力」を指します。この可動性が十分に備わっているかどうかで動きのしなやかさや運動能力は変化していきます。この可動性を判断するための指標が「可動域」になり、人間の身体の各関節にはどの方向にどのくらい動くことができるかというのが決まっています。
この可動域を広げるために一般的に用いられるのが「ストレッチ」ですが、実はこのストレッチを行うだけでは変化するまでに時間がかかってしまいます。
そこで、より効率よく最短で可動域を広げていくために、下記の手順でエクササイズを行うことを推奨します。
- 筋の緊張を取り除き、柔らかくする
- 筋を伸ばして柔軟性を向上させる
- 関節を動かして正しい可動域を再学習させる
順を追って説明していきましょう。
筋の緊張を取り除き、柔らかくする
普段の生活の中での姿勢や動きの癖、またそれに伴う疲労などにより気づかないうちに私たちの筋肉は緊張してしまっています。筋肉はよく”ゴム”に例えられますが、特徴として伸ばしたり縮ませたりすることができます。
しかし緊張が強く、強張って硬くなった状態の筋肉をいくら伸ばそうとストレッチをしても十分に伸びてくれないことが多いです。
そのため、筋の緊張を取り除き、筋自体を緩めて柔らかい状態にしてあげることが最優先で、その後にストレッチを行った方が実は効果は高いのです。
そこでまず、「ディトーニング」と呼ばれるエクササイズを行うことを推奨しています。このエクササイズは、筋肉の中にある筋膜と呼ばれる組織が硬化して筋肉が伸ばされようとするのを阻害してしまっている負の要因を取り除くための手段になります。
一般的にフォームローラーと呼ばれる道具を使用しますが、方法としては
①部位にフォームローラーを当てて10回転がす
②最も痛みが強い(ハリ感が強い)箇所で10秒静止する
となります。
まずはこれらを行うだけでも効果がありますが、部位によっては近くの関節を動かしてあげることでより筋の緊張を取り除くことができます。しかし、転がしただけでも強い痛みを伴うことがあるので可能な範囲で実施するようにしてください。
筋を伸ばして柔軟性を向上させる
筋の緊張を取り除くことができたら、筋肉は通常よりも伸ばしやすい状態になっていますので、ここで従来のストレッチを行い、いわゆる「柔軟性」を向上させていきます。
※柔軟性と可動性の違い:柔軟性は可動性を高めるための一つの要素
さて、ストレッチを行う上で注意したいのがその方法です。
人によってイメージしているストレッチが違うかもしれませんが、筋の柔軟性を向上させるためには「スタティックストレッチ(静的ストレッチ)」を行うことが必要となります。
よく反動をつけてストレッチを行うことがありますが、そのようなストレッチは「バリスティックストレッチ」と呼ばれ、運動開始前に筋肉を温めて使いやすい状態にするために行います。つまり、筋肉の柔軟性を高める上では反動を使うストレッチよりもゆっくりと伸ばすストレッチを行うことが理想的です。
スタティックストレッチを行う上では
①筋の柔軟性を高めるのであれば反動を使わずにゆっくりと伸ばす
②一つの部位を伸ばす時間は15〜30秒を目安に ※長時間伸ばすにしても60秒以上は行わない
という点に注意してみてください。
反動を使ったストレッチが悪いわけではありませんが、目的に合わせてストレッチを使い分けるようにしましょう。
関節を動かして正しい可動域を再学習させる
そもそも可動性は日常生活やスポーツなど体を動かす上で必要な体力要素の一つですが、改めて確認すると、それらを阻害する要因の「筋の緊張」「柔軟性の低下」は普段の動きの癖や制限から生じてしまいます。
言い替えると、筋の柔軟性を向上させても普段の動きが限定的で、関節可動域が一定範囲内で制限されていると、脳は「この関節はこれ以上は動かない」と間違った可動域を認識してしまいます。つまり、上記のストレッチまでで筋の柔軟性を向上させただけでは、可動域に変化が出たとしても一定時間が経ってしまうと長年の癖によって元の状態に戻ってしまいます。
このことからも筋の緊張を除去し柔軟性を向上させた後は、関節をあらゆる方向に正しく動かして普段の悪い癖を矯正し、本来の関節可動域を再学習させる必要があるのです。
これらを解決するために、「ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)」を行うことを推奨します。
ダイナミックストレッチの特徴としては、
- 対象となる関節を反復して動かすこと
- 関節周囲の筋肉に力を入れること
- 動かした位置で一定時間静止すること
が挙げられます。
スタティックストレッチとは違い、筋肉を伸ばすことだけでなく関節を正しい軌道で大きく動かし続けられるかが重要で、それらを正しく行うことができれば普段動かせていない範囲での正しい関節可動域を脳に認識させることができます。
ただし、このダイナミックストレッチをで行う上でもう一つ理解しておきたいのが「安定性」になります。動作構築の中では、動かしたい部位を動かすために動かさない部位を作ることが大事であり、このことはバランスを取るための土台をどのように作るか、という視点にも繋がってきます。
次回以降の記事で「安定性」について詳しく説明していきますが、前回の記事の中に出てきた「ジョイント・バイ・ジョイントセオリー」や「三面動作」の考え方も参考になりますのでそちらも併せてご参照ください。
トレーニングや日常生活に知って役立つ!身体や動きの構造について
まとめ
可動域を最短で広げるための手順
- 筋の緊張を取り除き、柔らかくする→ディトーニング
- 筋を伸ばして柔軟性を向上させる→スタティックストレッチ
- 関節を動かして正しい可動域を学習させる→ダイナミックストレッチ
動作の中での広い可動域を獲得していくことでパフォーマンス向上や機能改善に繋がっていきますので、これを機にぜひ試してみてください!