短時間で効果大の時短トレーニング!「低酸素トレーニング」とは!?
近年増加している低酸素トレーニング施設。標高2000m〜3000mほどの高地環境を、酸素濃度を調節する特殊な機械を用いて室内を低酸素環境にし行うトレーニング手法であり、「短時間で効果がある」としてランナーを中心に人気が高まっています。
一体低酸素トレーニングとはどういったトレーニングで、どのような効果があるのか。今回は低酸素トレーニングについて詳しく解説していきます。
トップアスリートの行う高地トレーニングを平地で気軽に。
3週間〜2ヶ月あるいはそれ以上の期間、競技パフォーマンス向上のために酸素濃度の低い標高の高い場所でトレーニングを行うという手法があります。主に競技に時間をかける事のできるトップアスリートが用いてきた手法で、これを「高地トレーニング」と言います。高地トレーニングには様々な利点があり、アスリートの中でもランナーやスイマーなど競技特性として有酸素運動となる持久系競技には最も効果があるとされています。
これまで高地トレーニングは高地環境に長期間滞在するということで、仕事を行いながら競技を行っている市民アスリートや、健康のために運動をするという一般の方への馴染みは薄かったです。しかし、平地で高地環境を作り出せる装置の開発により、高地トレーニングと同等の効果を得られるトレーニング手法ができた事で、今では多くの一般の方や市民アスリート、そしてトップアスリートも低酸素トレーニングを行うようになりました。
低酸素トレーニングのメカニズム
海抜0mの平地では空気中の酸素濃度は20.9%です。人間は、空気を吸って空気中の酸素を取り込み血液中に運搬し、エネルギーとして使います。その過程で副産物である二酸化炭素が生成され、排気することによって生きています。この一連の流れを「呼吸」と言います。
低酸素(高地)環境では、標高2400mほどで酸素濃度は15.6%ほどとなります。平地と比較すると、酸素濃度はおよそ5%ほど低くなります。この状態で生活を行うと、呼吸によって体内に取り込む空気の中の酸素量が減るため、人間の体では呼吸数を増やして十分な酸素量を摂取しようとしたり、体内でより効率良く酸素を運搬しようとする作用が働きます。
この「酸素量が低い」環境で身体の反応を利用して行うのが低酸素(高地)トレーニングであり、酸素が関係する運動である有酸素運動を伴った持久系競技が最も効果があるとされる所以です。また後ほど説明しますが、持久系競技の競技パフォーマンス向上のみならず、一般の方にも様々な利点があります。
低酸素トレーニングの効果
低酸素トレーニングの主な4つの効果
1 短時間の運動でも大きな効果
低酸素環境下では、上記で説明したように通常の環境より身体に対する負荷がかかるため、同じ運動を行った際の負荷も上がります。よって通常時よりも短時間で十分な効果を得ることができます。
2 脂肪燃焼効果
低酸素環境下でのトレーニングは、筋肉中のグリコーゲンを積極的にエネルギーとして使用することで、生体反応として筋肉中のグリコーゲン量が増加します。また、同時に筋肉中のミトコンドリアの向上により脂肪燃焼効果がアップします。これらの効果によって発汗量も増えダイエットなどにも繋がります。
3 適正な食事量に
低酸素環境下でのトレーニングは、グレリンという食欲増進ホルモンが抑制されます。結果として適正な食事量になります。
4 持久系能力向上
低酸素環境下でのトレーニングは、身体の酸素需要が高まり、結果として赤血球やヘモグロビン濃度の上昇、毛細血管およびミトコンドリアが発達します。酸素運搬能力や組織での酸素利用能力といった代謝能力が向上します。また、乳酸活用能力の向上により、高強度での運動を持続する時間が長くなります。
効果を感じる適切な利用頻度について
低酸素環境下でのトレーニングは、最低週に1回以上行うことで身体の順応を高めることができます。より高い効果を獲得するためには、週に2〜3回行うのをオススメします。
利用時の運動強度が高い場合は、通常環境下よりも身体への負荷がかかるため、疲労が蓄積します。競技パフォーマンス向上のためには身体の回復期も必要になってくるため、下記に説明している低酸素環境下での高強度トレーニングは連日行うのは避け、強度を変えたりして利用するのが良いでしょう。
運動負荷と酸素濃度について
様々な効果のある低酸素環境下でのトレーニング。運動負荷を設定するにあたり主に用いられてきたのが運動時心拍数です。自身の最大心拍数と運動時心拍数から運動強度(%)を算出し目的によって強度を変えて行うのが良いでしょう。
運動強度とトレーニング種別・効果に関しては、下記の記事にて説明しています。
【マラソン】ランナー必見!持久系能力の1つ「Vo2max」とは!?
また、上述の運動強度とともに、低酸素トレーニングの運動強度の指標にはもう一つ重要な指標があります。それが酸素濃度です。
体内の酸素濃度「血中酸素」とは、文字通り身体の中の血液中に含まれる酸素量の事です。
血中酸素の値は、100%を上限とし活動量が増え酸素を消費したり疲労状態が続くことで数値が下がります。一般的には、日常生活の中で96%以上だと正常値、95%以下コンディションが低下していると考えられます。これらの数値は日常生活におけるライフログとして、睡眠の質やストレス指数とともに疲労状態などのコンディションチェックに役立ちます。
血中酸素の計測方法
1.パルスオキシメーターという機器を用いて動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測する。
2.ガーミンを用いた血中酸素トラッキング機能を用いて計測する
また、ランニングのような酸素を消費する活動では、強度が上がるにつれて酸素消費量が多くなるため血中酸素の値が下がります。
個体差はありますが、標高2400mだと日常で92%ほどになることもあります。低酸素(高地)トレーニングの場合、身体の高地順応を表す指標にもなります。
血中酸素のおおよその目的別目安
高強度トレーニング:85〜90(低酸素環境下:80〜85)
中強度トレーニング:88〜93(低酸素環境下:83〜88)
低強度トレーニング:91〜96(低酸素環境下:86〜91)
健康管理:96〜99
一般の方の低酸素トレーニングの利点「心的負担なく気軽に効果のあるトレーニング!」
主な目的として、時短トレーニングや脂肪燃焼効果の促進によるダイエットなどの効果がある低酸素トレーニングを活用する利点は、運動を行う際の「心的負担」を軽減でき効果を高める事ができるということです。例えば、通常時で脂肪燃焼効果を高めようとした場合、運動強度を高める必要があります。それは「きつさ」が増すということです。
これでは運動を続けるのが億劫になることもあります。しかし低酸素環境下では、身体の反応によって結果的に脂肪燃焼効果が高まるので、運動強度を高める必要はありません。上述の血中酸素の目安の数値のように低強度のトレーニングを実践しても、実際は通常時における中強度と同等の負荷となるため心的負担を軽減して、運動効果を高めることが可能です。
競技パフォーマンス向上の方「故障リスクを軽減し質の高いトレーニング」
通常時の運動強度ではなかなか到達できない心肺機能に対する負荷を、低酸素環境下では容易にかけることができます。また、日々のトレーニングによって筋肉はダメージを受けます。高強度トレーニングを行うということは、筋肉に対する負荷が大きくなるため故障リスクも高まります。
低酸素環境下では通常時より運動強度を高めることができるため、筋肉へのダメージは少なく、心肺機能の強化が可能です。これによって運動負荷70%〜80%前後となる、高強度の運動を維持する事のできるLT(乳酸性作業閾値)の強化や、運動負荷90%以上によって強化されるVo2max(最大酸素摂取量)の向上にも繋がります。
最後に
低酸素トレーニングに関して詳しく説明しましたが、いかがでしたか?
東京都内の銀座と目黒で低酸素ジムを展開しているRDC GYMでは、ランニング時に目的別全13のカテゴリーで42種類のプログラムがあります。ぜひ活用してみてください!